書評『海賊党の思想』

林田力

浜本隆志『海賊党の思想 フリーダウンロードと液体民主主義』(白水社、2013年)は海賊党を紹介した書籍である。海賊党はヨーロッパ政界の台風の目になっている。日本でも海賊党のような政治勢力が必要であると実感した。

海賊党の最初の障害は党名のマイナスイメージである。しかし、ドイツではヒトラーユーゲントに対抗したエーデルワイス海賊団があり、海賊にはマイナスイメージだけではないという歴史がある。また、スティーブンスン『宝島』もあり、海賊に山賊や強盗とは異なるロマンを感じる人々もいる。この点は日本でも百田尚樹の小説『海賊と呼ばれた男』で海賊に既得権益と戦うという積極的な意味付けがなされている。また、尾田栄一郎『ワンピース』がヒットしている。

海賊党には知的財産権の共有というシングルイシュー政党のイメージがあるが、その思想は深い。根本には拘束されない市民的自由を求める意識があるとする。ここに海賊党の新しさがある。政府や企業の強権や監視社会化への対抗勢力は左翼になる傾向が強いが、マルクス主義の影響が強い左翼自身に集団重視や統制経済との親和性がある。国家や大企業の横暴から個人の自由を守ることを政治意識の出発点とする立場として、当面の政策では重なる点が多いとしても、左翼になりきることには抵抗する向きも多いだろう。そのような人々にとって海賊党は適した政党である。

ドイツで急成長した海賊党であるが、その背景には現体制への感情的な怒りから投票しており、海賊党そのものを評価している訳ではないとの分析もある(168頁)。一過性の新党ブームで終わってしまう可能性もあり、その思想性を深めて広げることが重要である。

海賊党に投票した人の傾向として、既存の政党から乗り換えた人の中では緑の党や左翼政党から乗り換えた人が多いとされる(171頁)。この点も既成の左翼に飽きたらない人々の受け皿としての海賊党の存在意義を示している。

ドイツ海賊党への入党動機のトップはメンバーの集まる会合への参加という(150頁)。インターネットのイメージが強い海賊党であるが、顔の見える関係も強みである。これは日本海賊党にも重なる。各地域で活発な活動を展開できるかが日本海賊党の成長の鍵になるだろう。


林田力

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