日本海賊TVスコットランド独立住民投票を追う

日本海賊TVは2014年9月15日から緊急特番『直接民主主義の胎動:スコットランド独立住民投票を追う』を開始する。クラウドファンディングで現地取材中の大芝健太郎氏がスコットランドから報告する。林田力は第2回(2014年9月16日)、第3回(9月17日)に聞き手として出演した。第3回は須澤秀人氏及び柳浦彰氏と共にSkypeでエジンバラにいる、大芝氏と話をした。

林田「ポンド問題で不思議な点はスコットランド独立派がポンドを使い続けたいと主張していることである。ウェストミンスターの支配を逃れたいならば独自通貨を求めるのではないか」

大芝「スコットランド独自通貨では信用が不十分と考えているのではないか」

林田「スコットランドがポンドを使う場合、どのような制度になるのか。これまで通り連合王国が発行するならばスコットランドは独自の通貨政策を持たないことになる。イングランドとスコットランドで共同の中央銀行を持つとしても、人口や経済力を考えれば持ち分はイングランドが多数を握り、スコットランドの主張は反映されない」

大芝「EUのユーロのイメージである。加盟国が各々通貨を発行する」

林田「その場合はEUでも問題になっているが、加盟国には財政赤字削減義務などが課されることになる。スコットランドは福祉国家を志向するが、それで成り立つか」

大芝「そこは独立反対派が突いているところである」

林田「スコットランドと一口に言っても、北海道くらいはある。独立問題について地域で温度差はあるか」

大芝「北部は独立派が盛んである」(注:番組放送当時はスコットランド文化の独自性が色濃い地域であるために独立派が盛んと見られていたが、投票結果は独立反対派が多い結果となった。ちなみに貧困層・若年層は独立賛成が多い傾向がある)

林田「アイルランド独立時には北部だけがイギリスに残った。最悪のシナリオとして、イングランドと関係の深い地域だけが残留を求める、スコットランド独立がスコットランド分裂をもたらすことも考えられる。そのような激しさはないか」

大芝「YES派とNO派の対立は激しいが、現在のところ、地域分断になるような性質ではない」

スコットランド独立賛成派はYES、反対派はNOと呼ばれる。これは報道で知っていたが、現地住民のインタビューから生きた言葉として聞くことができた。この視点は新鮮である。日本では原発NO、秘密保護法NO、集団的自衛権NOなどNOの運動ばかりである。それを一概に否定するつもりはない。危険ドラッグ(脱法ハーブ)NO、貧困ビジネスNO、ブラック企業NO、半グレ・ヤンキーNOなど社会悪へのNOは党派を越えた積極的な意味を持つ。しかし、左翼側のNOは、あまりにイデオロギーに囚われているきらいがある。

スコットランド独立問題も、英国残留がYESで、独立派が英国にNOという意味でNO派になるとの考えも成り立ちうる。そうではなく、YESスコットランドと定義したところが、面白い。YESの運動を作ることも大切である。

原発都民投票元請求代表者の柳浦彰氏は、賛成か反対かの結論に固執せず、YESの人が議論によってNOになる、逆にNOの人がYESになるというところに民主主義社会の成熟を見出だしていた。氏が請求人になった原発都民投票も、そのような社会を目指した運動という。住民投票のような直接民主主義は間接民主主義を必ずしも否定するものではなく、間接民主主義を刺激するものとも主張した。

スコットランド独立にはサッチャリズム以来のハイエナ資本主義(いわゆる新自由主義)への対抗という意味がある。本来ならば労働党がカウンターになるところであるが、ブレア政権のように補完勢力になっている感もある。労働党やリベラルなメディアのガーディアンはスコットランド独立派の志向する福祉国家を支持してしかるべきであるが、独立には反対である。

逆にスコットランド国旗を振り回す右翼的な独立派も兄弟愛や同胞愛の立場からハイエナ企業の金儲け優先ではなく、福祉重視を唱える。ここには冷戦時代の左右とは別次元の新しい対立軸ができている。人民の側に立つと言う左翼も体質は中央集権的であった。その矛盾がスコットランド独立問題に出ている。

日本で地域主体の政治の可能性があるとすれば、よくも悪くも維新が近いところにいただろう。恐らく「維新なんか」との声もあるだろうが、その種の左翼教条主義こそが古い左右対立の枠組みから抜け出せない原因である。

世界が注目した住民投票の結果は反対55.3%、賛成44.7%となり、独立反対派が上回った。投票率は過去最高の84.59%となった。


林田力

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